建設業において、土木工事と建築工事は、双璧の関係にあります。社会に対する貢献度や仕事のやりがいについても、優劣をつけるのは難しいです。
しかし土木工事は、土木工事=土工という印象が強いため、泥や土にまみれる「汚れ仕事」というイメージがあります。
現在の土木工事は、現場の機械化やIT化が急速に進んでおり以前とは雲泥の差です。
社会全般を足元から支える土木業界は将来性も安定していて、常に人員不足の状態であり、売り手市場です。
やりがいも将来性もある土木業界で、キャリアアップを目指すために、土木工事の仕事内容と取得すべき資格について紹介します。
目次
土木工事の定義と仕事内容の概要を把握する

土木工事という仕事で、自分らしく活躍するために、土木工事の定義や仕事の概要を把握することから始めましょう。
これまで土木工事に携わってきた人は、改めて土木の奥深さを感じることができるはずです。
土木工事とは何か

「土木は地面の下、建築は地面の上」という例えがあります。
土木工事では、トンネル、道路、擁壁など地面の上にあるものも、土木構造物として造ります。ただし、地上部分を支え維持するために、地面の下でも大規模な工事をしています。
地上何十階建てというビルディングも、その高さを支えるには、頑丈な基礎が必要です。この基礎を造るのも土木工事になります。
土木工事は、社会のさまざまな場所で、私たちの生活を支える工事をしているのです。
土木工事は建設業

土木工事を含む建設業は、暮らしを守り、経済を支え、いのちを守る仕事をしています。
特に土木工事は、道路や河川の護岸、橋など社会にとって重要な構造物をつくります。家や学校、病院などの建築物も、土木による造成や地盤改良、基礎づくりが欠かせません。
自然災害の多いわが国では、災害に強い社会基盤整備のための土木工事が求められています。また、災害が起きた場合の復旧作業でも重要な働きをするのは土木工事です。
土木工事とインフラ

土木工事と密接な関係にあるものの一つが、インフラです。
インフラとは、社会資本とも呼ばれ、生活を支える基盤のことです。なかでも、道路、橋梁、水道、下水道などは土木インフラとして分類されます。
わが国の土木インフラは、高度成長期に集中的に整備されました。すでに40~50年が経過し、更新の時期を迎えています。経年劣化した土木インフラが破損した場合、生活に支障をきたすことになってしまいます。
土木インフラの更新は、今後の土木工事にとって、大きな仕事になってくるはずです。
土木工事の具体例ごとに仕事内容を理解する

土木工事には、さまざまな種類の仕事があります。ここでは、代表的な6つの工事について紹介します。
造成

造成工事とは、元の土地の形や質を変えることをいいます。例えば、農地や林地だった場所を宅地分譲地に変える工事のことです。
造成工事によって、土地の変形を整正したり、高低差を緩やかにしたりします。また、地盤が軟弱な場合は、良質土との入替や土壌の圧密を促進させるための改良をします。
土砂の崩壊を防ぐための土留め工事や擁壁工事も、造成工事の一環として施工されることが多いです。
基礎

基礎工事は、地盤に建物の土台をつくる重要な工事です。土台は、鉄筋コンクリート造りが基本となります。
土台がしっかりしていないと、建物は傾いたり、倒壊したりします。ですから、基礎は頑強な地盤を必要とします。
建物を支えることができる地盤まで、柱のような基礎を打つのが、杭基礎です。
頑強な地盤が浅い位置にある場合は、地盤に直接基礎を打つ、直接基礎が用いられます。直接基礎には、打ち方の違いで、ベタ基礎、布基礎、独立基礎の3種類があります。
道路

道路で行われる工事全般を、路上工事といいます。道路工事、専用工事、承認工事の3つに分類されます。
道路工事とは、道路の新設、改良、維持・補修などのことで、発注者は道路管理者の国や地方自治体などです。占用工事は、水道、下水道、ガス、電気、通信網などを更新する工事で、占用事業者が発注します。
地先の個人住宅のために歩道の切下げをしたり、ガードレールを撤去したりするのが、承認工事です。
土木工事は、これらの工事すべてに関わっています。
河川

河川工事とは、河川の氾濫を防いで水害を防止する、堤防設置や河川の床止めをする工事のことです。また、河川護岸の維持修繕、環境整備なども河川工事になります。
河川工事のおもなものは以下のようになります。
砂防工事 | 河川の氾濫を防ぎ河川流域の人々の安全や環境を守る工事すべてを指す |
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地すべり防止工事 | 地すべりを緩和させる抑制工と構造物設置で防止する抑止工がある |
砂防ダム工事 | 河川の土砂災害防止のためスリット状のダムを設置する |
床止め工事 | 川床の土質や形状を変化させて氾濫しにくい河川にする |
ダム

ダムには2つの機能があります。洪水を防ぐ治水機能と、かんがい用水・水道用水・発電用水などの利水機能です。
私たちの安全で快適な生活を支えるダムをつくるのも、土木工事です。
ダム工事は以下のような流れで行われます。
- 必要な資材を運搬するための道路づくり
- 工事のため一時的に川の流れを変える
- 基礎地盤をつくる
- コンクリートを打設する
- ダム内部に水をもどす
- 試験的に貯水・放流し安全を確認する
ダムの建設は、計画から完成まで、10~20年かかる土木工事です。
橋梁

橋梁工事とは、文字通り、橋を架け渡す工事のことをいいます。
橋梁工事の現場は、河川や渓谷、道路や鉄道など多肢にわたります。橋梁の形状も、桁橋、吊り橋、アーチ橋など多彩です。
橋梁工事の手順は、以下のようになります。
- 橋の基礎を打つ基礎杭工
- 基礎地盤を崩れないようにする土留め工
- 掘削しながら梁を設置する
- 杭の上に型枠設置しコンクリートを流す
- コンクリートが固まったら型枠を外す
- 橋桁架設
- 床版・橋梁付属物設置
- 舗装と設備の設置
土木工事で役立つ資格を取得してキャリアアップ

土木業界でキャリアアップを目指すときに、最初に取り組むべきなのは資格の取得です。資格は、優れた技能や経験を持っているという証明になります。
ここでは、土木工事で役立つ資格について見ていきます。
土木施工管理技士

土木施工管理技士は1級と2級に分かれており、1級は監理技術者、1級か2級を取得していれば主任技術者として現場に立つことができます。
土木施工管理技士の資格取得者がいると、企業側に1級で5点、2級で2点が、技術評価点として加算されます。企業側にとって大きなポイントになるため、資格取得を支援する制度のある会社が多いです。
土木施工管理技士は昇給や昇進に結びつきやすい資格なのです。
2021年の1級土木の一次試験の合格率は60.6%、二次は36.6%となっています。
コンクリート診断士

コンクリート診断士は、既存のコンクリート構造物を対象とした診断・維持管理のスペシャリストとして、幅広い分野で活躍しています。
コンクリート診断士の資格は、社団法人日本コンクリート工学協会によって創設された公的資格ですが、国土交通省の技術者資格登録制度にも登録される社会的認知の高い資格です。
2020年の合格率は16.3%で狭き門といえますが、コンクリート関連業界では圧倒的に評価の高い資格となっています。
測量士

測量士は、対象となる土地の距離、角度、高低差などを計測し、そのデータを基に地図編集をするための資格です。
建設工事は、この地図をベースに掘削方法や構造物の細部を決めるため、測量ミスは許されません。
測量士は、測量作業の主任者として測量計画を作成できますが、測量士補は作成できません。測量士補は、測量士が作成した計画に基づき、実際の測量を行います。
2021年の測量士試験の合格率は17.9%、測量士補は34.8%です。
まとめ 土木工事は社会の土台を支えている

土木工事は、社会の土台を支えている、やりがいのある仕事です。
社会が成熟し新設工事は少なくなるでしょうが、膨大なインフラの更新の時代に入るため、将来性についても心配ありません。
資格取得というキャリアアップをしながら、自分らしく活躍できる土木工事は何かを、じっくりと探していきましょう。